4月から中小企業も割増賃金率引き上げに

2023年03月15日

まもなく2023年4月1日から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げが、中小企業に対しても義務化されます。

 

すでに大企業に対しては割増賃金率を50%に引き上げていましたが、いよいよ中小企業も25%から50%へ引き上げられることに。

 

今回は、割増賃金率とは何か、そして中小企業が取り組むべきことなどについて解説します。

残業

「法定労働時間」について

法定労働時間とは、労働基準法によって定められた、労働時間の上限。

 

使用者は労働者に対し、原則下記以上に働かせてはいけません。

 

・1日8時間
・週40時間

 

つまり「法定労働時間」以上労働させた場合、「時間外労働」に該当し、割増賃金が発生します。

「休日」と「休憩時間」のルール

さらに労働基準法では、休日と休憩時間に関するルールも定められています。

休日

使用者は労働者に対して、次のどちらかのような休日を与える義務があります。

 

・毎週1日以上の休日
・4週間を通じて4日以上の休日

 

このルールに基づいて与えられる休日を「法定休日」といい、法定休日はあくまでも週に1日だけ。

 

日本の企業は土日休みや週に2日休みも多いですが、法律では週に1日休みがあればOKなのです。

休憩時間

使用者は労働者に対して、次のような休憩時間を与える義務があります。

 

・労働時間が6時間を超える場合は、45分以上の休憩
・8時間を超える場合は、1時間以上の休憩

 

労働者は休憩時間を自由に利用することができます。

 

法定休日と法定労働時間の要件を守っていれば、労働日や始業・終業時間に制限はありません。

中小企業の割増賃金率の引き上げ

さて本題です。

 

4月から引き上げになるのは、月60時間を超える時間外労働に対しての割増賃金率です。

 

時間外労働も月60時間以下は、これまでどおり25%の割増賃金率であり、月60時間を超えた分が50%となります。

 

割増賃金の計算方法は次のとおり。

 

割増賃金算定基礎額 × 時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数 × 割増率

夜景

中小企業がとるべき対応

割増賃金率が引き上げに向け、中小企業はさまざまな対応をとらなければなりません。たとえば次のようなことです。

労働時間の適正把握

時間外労働が増えれば、人件費も増大します。

 

中小企業はこれまで以上に、従業員の労働時間の適正把握をすることが重要です。

 

具体的な方法としては、勤怠管理システムを導入し機械的に労働時間を管理したり、定期的に業務状況をヒアリングしたりする方法などがあるでしょう。

業務効率化に努める

残業や休日・深夜の労働時間を削減するためには、業務内容やフローの見直し、従業員の意識改革など、生産性向上や業務効率化に繋がる取り組みに着手しなければならないでしょう。

 

具体的には、ペーパーレス化や新たなシステムや機械の導入、アウトソーシングの活用などです。

 

初期投資が必要となりますが、今後の経営戦略や企業の財務状況などを考慮し、無理のない範囲で業務効率化に向けた取り組みを進めていきましょう。

代替休暇制度の導入検討

代替休暇制度とは、月60時間超の時間外労働をした従業員に対して、引き上げ分の割増賃金率を支払う代わりに、有給休暇(代替休暇)を付与する制度です。

 

会社にとっては人件費の抑制になり、従業員にとっては健康保持につながるメリットがあります。

 

ただし代替休暇は、60時間を超える時間外労働に対する割増賃金分についてのみ。代替休暇を付与したとしても、通常の時間外労働に対する割増賃金(25%)の支払いは必要です。また代替休暇制度を導入する際には、就業規則を変更する必要があります。

まとめ

月60時間を超える時間外労働についての割増賃金率の引き上げは、2023年4月1日から。

 

そもそも割増賃金率の引き上げは、長時間の残業を削減し、すべての従業員が働きやすい環境を実現することを目的におこなわれるものです。

 

割増賃金率の引き上げられれば人件費の増加につながり、中小企業に大きな影響を与えることも考えられます。

 

企業発展のためにも、適切な労働時間の把握と管理の徹底、時間外労働を削減する取り組みなどをしっかりしておきましょう。