年末調整の電子化、もう導入していますか
2022年11月15日
総務部や人事部にとって、年末調整のこの時期の対応はとても大変なものでしたが、ここ数年で年末調整の電子化を導入する企業も増えました。
これまでの、税務署から受け取った控除証明書を従業員に配布し、従業員は必要事項を記入して会社に提出。最終的に会社は税務局へ提出するという作業が、電子化することでデータとして処理できるようになり、大幅に手間が軽減。
年末調整の電子化は義務ではありませんが、年末調整を電子化する際に必要だった事前承認も2021年以降不要となり、よりデジタル化を進めやすくなりました。
まだ電子化していない企業は、メリットの大きい電子化の導入を検討してみてはいかがでしょうか。今回は年末調整に電子化について解説します。
年末調整で電子データ提出が可能な書類
2022年11月現在、電子化が認められている書類は次のとおり。
【申告書類】
・給与所得者の扶養控除等申告書
・従たる給与についての扶養控除等申告書
・給与所得者の配偶者控除等申告書
・給与所得者の基礎控除申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
・給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
・所得金額調整控除申告書
・退職所得の受給に関する申告書
・公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
【添付書類】
・生命保険料控除証明書
・地震保険料控除証明書
・寄附金の受領証
・寄附金控除に関する証明書(特定事業者発行用)
・特定口座年間取引報告書
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
年末調整を電子化するメリット
年末調整の電子化は、企業側にも従業員側にもメリットがあります。それぞれ見ていきましょう。
会社側のメリット
これまでは、年末調整をするために必要な書類を入手し、それを従業員に配布・回収。間違いがないか検算する必要もありました。
しかし電子化することで、この一連の作業を削減できます。また控除証明書などをデータで受け取れば、添付書類等の確認も不要に。
さらにペーパーレス化できるので、書類の保管場所も必要ありません。
従業員側のメリット
これまで従業員は、年末調整書類を手書きで作成し、控除額を自分で計算する必要がありました。
しかし電子化することで、従業員は年末調整控除申告書作成用ソフトに入力するだけ。手書きの作業をする手間がなくなり、控除額の計算も不要に。申告内容の不備も以前より削減できるでしょう。
さらに「マイナポータル連携」に対応している保険会社なら、複数の控除証明書をまとめて取得可能。データで取得すれば保管の必要もありません。
年末調整を電子化することで考えられるデメリット
年末調整の電子化には、デメリットらしいデメリットはありません。
しいて言うならば、従業員の理解が必要不可欠ということ。PCやスマートフォン操作に不慣れな従業員やPCやネット回線などの環境のない従業員に対して、どのような対処をするのかを考える必要があります。
また控除証明書等データ取得のため、従業員はアプリの取得や契約者登録などをしなければなりません。場合によっては、マイナンバーカードの取得も必要です。しかしマイナンバーカードの取得により、暮らしをより良くするさまざまなサービスが受けられるようになります。
年末調整手続の電子化へ向けた準備
メリットの大きい年末調整の電子化ですが、事前準備をきちんとしておかないとうまくいかないこともあります。早急に準備にとりかかるようにしましょう。
会社側の準備
年末調整申告書作成用のソフトウェアはどのソフトウェアを使用するか、また電子化後の年末調整手続の事務手順についてなどを検討します。(※従業員は、国税庁から提供する年調ソフトだけでなく、民間のソフトウェアでも作成可能)
従業員から提出される年末調整申告書データや控除証明書等データを、利用している給与システム等にインポートし給与システムの改修等も行わなければなりません。
また従業員への周知も大切な準備です。
従業員側の準備
年末調整申告書データを作成するためのソフトウェアを取得します。国税庁が提供する「年末調整控除申告書等作成用ソフトウェア」を利用することもできますが、利用するソフトウェアは勤務先に確認する必要があります。
また控除証明書等データの取得も必要です。このあと詳しく説明します。
従業員の控除証明書等データ取得について
従業員は自ら「控除証明書」等のデータを取得しなければなりません。
取得方法は、次の2つです。
【1】保険会社のホームページから取得
保険会社のホームページなどから、控除証明書等のデータを取得します。
取得方法は各保険会社によって異なりますが、契約者専用ページにログインしダウンロードする方法が一般的です。不明な場合は、各保険会社にお問い合わせください。
【2】マイナポータルに連携して一括取得
マイナポータルがあれば、一括して控除証明書のデータをダウンロード可能。
そのためには、事前準備が必要です。
・マイナンバーカードの取得
・マイナンバーカードに対応したスマホの準備
・マイナポータルアプリのダウンロード
・マイナポータルで利用者登録
・マイナポータルと民間送達サービスの連携
上記の準備が整ったら、保険会社のホームページなどで保険証券番号などを入力するなどの設定を行います。
まとめ
今回ご紹介したように、会社側・従業員側が準備をすれば、年末調整の電子化は比較的容易に導入可能。導入すればこれまでの手間や時間が削減でき、コストカットにもつながります。
まだ導入できていない企業は、年末調整の電子化を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。