インボイス制度の準備、できていますか?
2023年01月15日
2023年、ビジネスに関連するいくつもの法改正が施行される予定ですが、その代表的なもののひとつが、10月1日より導入される「インボイス制度」。
反対運動が起こるなど話題になっていますが、なぜ反対なのか、なにが変わるのか、いまいちよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
インボイス制度により、作成する請求書の内容が変わったりルールが変更されたりとさまざまな影響があるため、内容を理解しておくことが大切。
今回はインボイス制度の内容などについてわかりやすく解説します。
インボイス制度とは
まずはざっくりインボイス制度について説明しましょう。
インボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。
現在8%と10%が混在している日本の消費税率。インボイス制度を導入することにより、不正や経理でのミスを防ぎ、消費税納税の透明性を図ることが期待されています。
インボイス(適格請求書)とは、国が認めた請求書のこと。
インボイスを発行するためには「適格請求書発行事業者」として登録申請が必要で、税務署の登録を受けると登録番号などが通知されます。
まだ少し先の話だと思っている方もいるかもしれませんが、10月1日のスタート時にインボイスを導入するには、3月末までに登録申請が必要。あまり時間がありません。
「適格請求書発行事業者」になるには
先述のとおり「適格請求書発行事業者」になるためには、事前の登録が必要です。
また適格請求書発行事業者の登録は、消費税の課税事業者でないと行うことができません。
つまり免税事業者はインボイスを発行することができないため、免税事業者が「適格請求書発行事業者」になるためには、課税事業者になりインボイスに登録する必要があります。
課税事業者と免税事業者
課税事業者、つまり消費税納付義務のある事業者になるかどうかの境目は、課税売上高が1,000万円を超えるかどうかです。
課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者となります。1,000万円を超えていなければ、消費税納付の義務を負いませんが、あえて課税事業者として届出をして消費税を申告することも可能です。
インボイス制度が導入されようとしている今、免税事業者は次のどちらかの選択を迫られています。
・免税事業者を継続する
・課税事業者になりインボイスに登録する
ここで注意したいのは、免税事業者から課税事業者になることは可能ですが、課税事業者が免税事業者になることはできないということ。
「消費税を納付しなくていいなら、免税事業者のままでいいじゃん!」そう思った方もいるかもしれませんが、そう簡単なことではないのです。免税事業者が受ける影響については、のちほど紹介します。
現行の区分記載請求書とインボイスの違い
区分記載請求書は、従来の請求書に以下の内容を記載した請求書のこと。なお区分記載請求書の交付は義務でなく任意です。
・請求書発行事業者の氏名又は名称
・取引年月日
・取引の内容(軽減対象税率の対象品目である旨)
・税率ごとに区分して合計した対価の額
・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
インボイスは、区分記載請求書に以下の内容をプラスして記載した請求書。
・登録番号
・適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等
インボイス制度が導入されると、買い手は適格請求書の保管が義務付けられます。
インボイス制度が抱える問題
インボイス制度の導入は、さまざまな人や企業に影響を与えますが、特にフリーランスの個人事業主など免税事業者に大きな影響を及ぼすとされています。
たとえば次のような影響を受ける可能性があります。
・仕事が減ってしまう可能性
・報酬が減る可能性
・消費税負担が大きくなる可能性
上記の問題に深くかかわってくるのが「仕入税額控除」です。
仕入税額控除とは
仕入税額控除とは、課税売上の消費税額から課税仕入れの消費税額を差し引くこと。
消費税は消費者が負担し事業者を介して納付されます。
生産や流通といった各取引段階で二重三重に消費税が累積しないよう、消費税額を控除する仕組みが「仕入税額控除」です。
ご覧のように、適格請求書発行事業者に発注したほうが、消費税を余分に負担する必要がありません。
同じモノやサービスを仕入れるのであれば、適格請求書発行事業者を選ぶのは当然のこと。
よって、免税事業者は仕事が減ってしまったり、消費税相当分の報酬を減らされたりする可能性があるのです。
もちろん課税売上高が1,000万円を超えていなくても「適格請求書発行事業者」に登録できますが、その分消費税負担が大きくなります。
課税事業者が抱える問題
仕入税控除ができなくなることで、これまで負担しなくてもよかった消費税まで負担しなければならなくなったり、経理の手間が増えたりと、課税事業者もさまざまな問題が発生する可能性があります。
インボイス制度が開始されると、発行するインボイスの控えを保存したり、受領したインボイスを保存したり、さらに記帳する項目が増えたりと、事務処理が煩雑になり経理の負担は格段に増えるでしょう。
従業員の理解や経理システムの改修なども必要です。
まとめ
今年10月1日から開始されるインボイス制度。
早めに社内ルールの整備を行い、トラブルにならないよう取引先との調整をとっておくことをおすすめします。
複雑で理解するのが難しいですが、しっかり情報収集をし、わからないことは早めに専門家に相談を。