「相続」について話し合ってみませんか

2024年04月30日

ゴールデンウイークやお盆・正月など、ご家族が集まるときに話しておきたいのが「相続」のこと。

 

「大した資産はないので、うちには無関係」と思っている方もいますが、遺産額が少なくても相続人間でもめるケースは少なくありません。

 

ある調査によると、遺産相続でもめる人たちは、遺産額1000万円以下が3分の1を占めるといいます。特に遺産のうちのほとんどが不動産であるともめる傾向にあるようです。

 

他人事として考えず、親が元気なうちに家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。今回は「相続」について取り上げます。

相続

相続人について

「相続人」とは、遺産を受け継ぐ人を指します。

 

相続人は遺言の有無によって異なり、遺言書の内容が優先されるのが原則です。

 

遺言書に「誰にどの財産をどれだけ相続させる」という指示があれば、その指示が優先されます。遺言書は自分で書くこともできますが、内容が民法に規定に則していなければ無効となるため注意が必要です。心配な場合は、公証人が遺言者から聞いた内容を作成する「公正証書遺言」を用意するといいでしょう。

法定相続人について

遺言書を残していない場合は、法律で規定されている相続人で遺産を分割します。法律で規定されている相続人のことを「法定相続人」といいます。

 

法定相続人は、被相続人の「配偶者」と「被相続人の血族」です。配偶者は常に法定相続人となりますが、事実婚の場合や、離婚をした”元配偶者”には相続する権利はありません。

 

配偶者以外の相続順位は次のとおり。

 

第1順位:子(子が死亡している場合は孫、孫な死亡している場合はひ孫)
第2順位:親(親が死亡している場合は祖父母)
第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合は甥姪)

 

なお再婚した配偶者の連れ子は相続人になれません。相続人になるためには、養子縁組を組むか、連れ子に財産を譲ると遺言書に明記します。

 

また配偶者はいるけれど、第1~3順位までのすべての人がいない場合(子・孫・ひ孫・親・祖父母・兄弟姉妹・甥姪なし)は、配偶者のみが相続人です。

法定相続分

遺言書があれば原則として遺言書どおりに財産を分割しますが、ない場合は民法で定める法定相続分で分けられます。(協議で相続人全員の合意が得られれば、法定相続分で相続する必要はありません)

 

法定相続分は、相続人の範囲と人数によって変わります。

配偶者がいる場合

相続分

たとえば配偶者あり、子どもが3人いる場合で、遺産総額が1,200万円だった場合は、配偶者が600万円。子どもが1人につき200万円となります。

 

配偶者あり、子どもがおらず親がいる場合は、配偶者が800万円、親が400万円。

 

配偶者あり、子どもも親もおらず兄弟がいる場合は、配偶者が900万円、兄弟が300万円。仮に兄弟が2人いれば(亡くなった方が3人兄弟ならば)配偶者が900万円、兄弟は1人につき150万円となります。

配偶者がいない場合

配偶者がいない場合の相続割合は、該当順位の上位の方が100%となるため、該当する相続人の人数で割ります。

 

例えば配偶者なしで、相続順位が1位となる子どもがいる場合は、子どもがすべてを相続します。仮に親や兄弟がいても、子どものみが相続人です。

 

離婚したケースは、これに当てはまります。

相続税について

亡くなった人から遺産を取得すると、取得した遺産の評価額に応じて「相続税」を負担します。

 

遺産額が基礎控除額以下の場合には、相続税はかかりません。

 

基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。

 

つまり法定相続人が1人であれば3,600万円、2人であれば4,200万円、3人であれば4,800万円…までは相続税は発生しません。

 

また、配偶者控除や小規模宅地等の特例、未成年者控除や暦年課税の贈与税額控除など、上手に活用することで節税できる控除制度や特例もあるため、基礎控除額を超えても必ず相続税がかかるわけではありません。

 

相続税が発生しそうな場合は、生前に相続財産を少なくする対策をしておきましょう。

相続税を節税するための対策

まとまった財産を相続する場合は、相続税がかかりますが、対策することで相続税の節税が可能です。元気なうちに家族で話し合っておくことをおすすめします。

 

たとえば次のような相続税対策があります。

 

・暦年贈与
・一括贈与
・生命保険
・不動産評価

 

暦年贈与

年間110万円の贈与税非課税枠を活用して、相続財産を少しずつ減らしていく方法が暦年贈与。1年間の贈与額が110万円以内であれば、贈与税はかかりません。ただし被相続人の死亡7年以内に行われた暦年贈与は、相続税の課税対象になるので注意しましょう。

一括贈与

一度にまとまった財産を贈与する際は、一定の要件を満たすと以下の特例を利用できます。両親や祖父母から教育資金として贈与を受ける場合1,500万円まで、結婚・子育て資金は1,000万円まで贈与税がかかりません。

生命保険

生命保険は「500万円×法定相続人の数」まで相続税は非課税となります。基礎控除額を超える分を保険金として相続人が受け取れるようにすれば、非課税枠が適用され、相続税の節税につながる可能性があります。

不動産評価

不動産の相続財産の評価方法は、預貯金と異なります。うまく活用することで評価額が下がるため、相続税の節税が可能です。たとえば土地の相続税評価額を80%減額できる「小規模宅地等の特例」やマンション・アパート経営なども節税につながるでしょう。

まとめ

今回は「相続」について取り上げました。

 

相続の対象となるのは、現金や預貯金だけでなく、不動産や株式、自動車や貴金属類、はたまた借金や滞納家賃、未払いの税金などの負債もすべてです。

 

「うちには関係ない」とお考えの方も多いですが、少額であってももめるケースは少なくありません。

 

家族みんなが元気なうちに話し合っておくことをおすすめします。もしも相続税が発生する可能性があるのならばなおさら早めに節税対策をしておきましょう。