多様化するハラスメント。意味などを解説
2023年06月15日
先日、ある地方自治体職員の名札表記が、フルネームから名字のみに変更するという事例が話題となりました。
SNSの普及で名札から個人情報を検索されたり、プライバシーが侵害されたりすることへの懸念だけでなく、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策でもあるといいます。
また某バス事業者の「お客様は神様ではありません」という、カスハラに対する強烈な意見広告が話題となったのも、記憶に新しいところです。
カスタマーハラスメント。つまり顧客が企業に対して理不尽なクレーム・言動をすることをいいます。
近年、「〇〇ハラスメント」という言葉をよく耳にするようになりましたが、それがハラスメントにあたるかどうかは受けた側に委ねられてしまうため、境界線は曖昧で、明確な線引きは難しいでしょう。受けた側が不快に感じてしまえば、それはハラスメント。
職場などで、知らず知らずのうちに当事者とならないよう、今回はさまざまなハラスメントをピックアップし意味などを解説していきます。
ハラスメントとは
ハラスメント(Harassment)とは、相手が嫌がることや迷惑に感じる行為のこと。大きく精神的なものと肉体的なものにわかれます。
1980年代ごろから「セクシャルハラスメント」という言葉がよく聞かれるようになり、1997年の男女雇用機会均等法の改正により「セクハラ規定」が設けられました。その後さまざまなハラスメントが登場し、ハラスメントが横行しないよう法律整備も進んでいます。
多様化するハラスメント
ここからはさまざまなハラスメントを紹介します。
聞いたことのあるもの、初めて聞くものなど、いろいろあると思いますが、自分が当事者とならないよう知識をつけておきましょう。
セクシャルハラスメント(セクハラ)
セクシャルハラスメントは、「性的嫌がらせ」のこと。
男性から女性への行為だけではなく、女性から男性、また同性間のやりとりでもセクハラとみなされる可能性があります。
たとえば、おしりを触る、抱きつく、卑猥な言葉をかける、何度もデートに誘う、女性にお酌を強要する、机の上にヌード雑誌を広げる、女性に対して結婚や出産のことを尋ねるといった行為も、セクハラに該当します。
容姿や服装、プライベートに踏み込む言動もセクハラと受け取られかねないため、使わないようにしてください。
セカンドハラスメント(セカハラ)
セカンドハラスメントとは、セクハラを受けた人が被害について相談したことによって起きる二次的被害を指します。
勇気を出して相談したにも関わらず、「本当はあなたが挑発したのではないか」「被害妄想だ」「それくらいは普通」「金が目的だろ」「出世に響くよ」など、更なる嫌がらせを受けるハラスメントです。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメントは、職務上の地位や役職などで立場の弱い人を攻撃し、精神的・身体的に苦痛を与えるする行為です。多くは上司から部下、先輩から後輩に対して行われますが、部下から上司に行われるケースも。
たとえば、殴る、蹴る、叩くなどの暴力行為や、暴言を浴びせられる、物事を強制する、執拗に叱責される、草むしりばかりさせる、一人だけ別室に席を移されるなどの行為があります。
モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメントとは、言葉や態度によって精神的な苦痛を与える嫌がらせです。
同僚、上司、親、恋人、配偶者、教師など関係性はさまざまで、陰口や無視、プライベートへの過干渉など、精神的に追い詰めるもの。
たとえば、努力を正当に認めてもらえない、常に怒られる、一人だけ飲み会などに誘われないなどもモラハラです。「精神的虐待」ともいわれ、被害者は自ら命を絶つほどに追い込まれる場合もあります。
マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメントとは、妊娠や出産を理由に、妊婦に対して肉体的・精神的に行われる嫌がらせ行為のこと。
たとえば退職を迫ったり、減給を命じたり降格させたりすることも、マタハラに当たります。また電車など公共の場でのマタハラも、残念ながら増えています。
パタニティハラスメント(パタハラ)
パタニティハラスメントとは、配偶者の妊娠・出産・育児に関わる父親に向けられたハラスメント。
近年、育休を取得する男性が増えていますが、まだ少数であるケースもあり「他の人に迷惑をかける」「仕事熱心でない」などといった嫌がらせを受けることがあります。
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
広義ではセクハラに当たりますが、「男だから」「女だから」といった性別によって決めつける言動がジェンハラ。
たとえば女性だからお茶汲みをさせる、男だから力仕事をさせるといった言動がジェンハラに当たります。
またこちらは愛着を持って相手を「ちゃん付け」で呼ぶことがジェンハラと捉えられる可能性も。関係性や世代間のギャップもありますが、できるだけ「さん付け」で呼ぶように心がけましょう。
エンジョイハラスメント(エンハラ)
エンジョイハラスメントとは、仕事のやりがいや楽しさを押し付ける、無理に共感を求める嫌がらせ。
仕事にやりがいを見つけ楽しみながら仕事をすることが世の中の風潮としてありますが、そう思っていない人もいます。価値観はそれぞれのため、「楽しい」を押しつけないように。
時短ハラスメント(ジタハラ)
働き方改革で残業を減らす動きが出ていますが、行き過ぎてしまうとジタハラに。
残業の削減の具体的な策がないまま業務時間の短縮をすると、就業後に自宅やカフェで残業代の出ない残業をするケースもあるようです。間違った業務時間の短縮がジタハラとなり、多くの従業員を苦しめます。
テクノロジーハラスメント(テクハラ)
パソコンやスマホなどに詳しい人が、苦手とする人に対してする嫌がらせがテクハラです。
パソコンの知識不足などを馬鹿にしたり、わざと難しい専門用語を使って教えたりする行為のほか、「操作がわからないからやっておいて」と丸投げする行為も。これは逆テクハラと呼ばれます。
ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
ソーシャルハラスメントとは、TwitterやFacebookなどのSNS上で発生する嫌がらせのこと。
投稿への攻撃的な書き込みやいいねなど反応の強要、しつこい友達申請などがソーハラに該当します。適切な距離感でのSNSを利用しましょう。
ブラッドタイプハラスメント(ブラハラ)
ブラッドタイプハラスメントとは、A型、B型、O型、AB型の血液型が与える印象で、その人の人柄や性格を決めつけるような言動です。
一般的に「A型は几帳面」「B型は自己中心的」「O型は大雑把」「AB型は変わり者」などと決めつけられ、偏見やいじめにつながるブラハラもあります。
ほかにもこんな〇〇ハラスメントが…
まとめ
今回紹介したハラスメントはごく一部です。
ハラスメントには、判断が難しいグレーゾーンが存在し、気づかぬうちにハラスメントが発生していることも少なくありません。
自分の言動により、誰かに不快感を与えていないかをしっかり振り返ることが大切。もし自分がハラスメントを受けたり見たりしたら、会社や労働局などに相談することも重要です。
企業側は職場で発生する可能性のあるハラスメントについて、コンプライアンス研修の導入や相談できる体制を整えるなど、組織として何かしらの措置や対応をしておくべきでしょう。