「2022年問題」は地価に影響するのか?

2022年07月30日

「2022年問題」や「生産緑地問題」という言葉を耳にしたことはありますか?

 

2022年問題を簡単に説明すると、主に都市部にある農地(生産緑地)が2022年に住宅用地として大量に供給されることにより、不動産価値が下落する可能性があるというもの。

 

「家を買うなら2022年以降がいい」と一部で囁かれているほどです。

 

結論から言うと今のところ大きな影響は出ていないようですが、不動産売買を考えている人は、今後の動きを注視していく必要があるでしょう。

 

今回は「2022年問題」を紐解いていきます。

2022

「生産緑地」とは

まずは2022年問題に大きくかかわる「生産緑地」について解説します。

 

生産緑地とは、今から30年前の1992年、改正生産緑地法によって指定された”市街化区域内の農地”のこと。

 

市街化区域とは「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」のことで、積極的に整備・開発を行っていく区域のことをいいます。

 

高度経済成長期、都市への急激な人口流入に伴い、無秩序な宅地開発が進んでいました。

 

市街化区域の開発が進み緑地が減少すると、土地機能の低下や災害の発生、住環境の悪化などの恐れがあります。そのため都市部にある農地を生産緑地に指定し、計画的に保全を図りました。

 

つまり生産緑地は、都会のオアシスのような場所。

 

生産緑地に指定された農地は、30年間農業を継続することを条件に、固定資産税や都市計画税の減額、相続税や贈与税の納税猶予といった税制上のメリットを受けることができました。そのため多くの土地オーナーが生産緑地指定を受けたというわけです。

生産緑地

「2022年問題」とは

生産緑地のうち約8割が2022年に30年が経過します。法律ではその農地を市区町村に買い取ってもらうように申し出ることができることになっています。

 

しかし財政難などの理由から、市町村による買取りがなされた実績はほとんどありません。

 

市町村が買い取らず、また他の農業希望者も購入を申し出ない場合には、生産緑地の指定が解除され、自由売買が認められます。

 

指定を解除された農地は、宅地として大量に不動産市場に流れ込む可能性があり、これにより地価が下落する可能性があるというわけです。

 

これを「2022年問題」「生産緑地問題」と呼んでいます

地価下落の懸念と対策

平成27年都市計画現況調査によると、全国の生産緑地は約13,442ha。主に首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)や大阪、愛知といった都市部に集中しています。

 

しかし約13,000haといわれても、その規模はイメージしにくいですよね。

 

例えば東京都には約3,300haの生産緑地が存在し、東京ドームに換算すると約700個分、大阪府は約2,100ha、東京ドーム約450個分に相当する生産緑地が存在します。そんな膨大な面積の土地が市場に供給されたら…。不動産価格の下落が懸念されているのも当然かもしれません。

 

土地オーナー目線で考えると、生産緑地の指定が解除されれば税制優遇が得られなくなるため、土地を手放したり、その土地に賃貸住宅を建てたりするなど、土地活用の方法を検討するでしょう。

 

そんななかできた新制度が「特定生産緑地」です。

「特定生産緑地」とは

「特定生産緑地」とは、農業者が望めば引き続き10年間、これまでと同様の税制措置を継続して受けることができる制度です。

 

これにより、2022年問題は多少緩和されました。

 

しかし特定生産緑地制度は、今回のタイミングを逃すと後から指定を申請することができません。申請しなかった生産緑地は固定資産税の優遇措置はなくなるため、売りに出されるなどされるでしょう。

 

特定生産緑地となった土地は10年経過するごとに、その後10年延長するかを選択することになります。逆に言えば2032年、2042年と10年ごとに同じように生産緑地が売りに出されることが考えられます。

まとめ

生産緑地の2022年問題。現時点では大きな影響はありませんが、売却を検討している、またはすでに売却した土地オーナーもいます。

 

また多くの建設会社やマンションデベロッパーが、この2022年問題を商機と捉えているでしょう。

 

不動産を売買する予定のある方は、今後の不動産価格の動向を注視してください。