個人事業主はインボイス対応すべきか?

2025年06月15日

2023年10月に導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除を受けるために必要な仕組み。

 

制度名は聞いたことがあっても「自分が対象なのか分からない」「いまだに対応すべきか迷っている」という個人事業主の方も多いはず。

 

今回は、制度の概要に加えて、実際に対応している・していない個人事業主の声も紹介しながら、判断のポイントを解説します。

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インボイス制度とは?

インボイス制度とは、正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。

 

取引先が「仕入税額控除」を受けるために必要な、適用税率や税額の記載など一定の基準を満たした「適格請求書(インボイス)」を発行する仕組みです。

 

このインボイスを発行できるのは、税務署に登録された消費税の課税事業者のみ。

 

個人事業主は、免税事業者か課税事業者のどちらかのため、インボイスを発行できるかできないかは、免税事業者であるか課税事業者であるかによって決まります

課税事業者

「課税事業者」とは、消費税を納める義務が生じる事業者のこと。

 

課税売上高が1,000万円を超えれば、必然的に課税事業者となります。

 

しかし1,000万円を超えていなければ、消費税納付の義務を負わない「免税事業者」か、消費税を納める義務が生じる「課税事業者」を自分で選択することができます。

 

「消費税を納付しなくてもいいのなら、免税事業者のままのほうが得」と思うのは当たり前ですが、免税事業者であることがマイナスになることもあるのです。

 

個人事業主は、自分の事業が小規模であるからこそ、課税事業者と免税事業者のどちらを選択すべきかをしっかりと吟味する必要があります。

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対応すべきかは「自分の仕事相手」を見て判断

インボイス制度への対応が必要かどうかは、自分の売上規模と取引相手の種類によって異なります。

 

法人や他の事業者と取引が多い(BtoB)場合は、対応しないと取引に影響する場合があるでしょう。一方で一般消費者向けビジネス(BtoC)なら、対応しなくても影響は小さいことが多いです。

 

自分の仕事相手を見て判断してください。

 

 

また以下に該当する人は、インボイス登録を検討したほうがいいかもしれません。

 

・取引先が法人で「インボイス発行が条件」としている

・今後、事業規模を拡大したいと考えている

・年間売上が1,000万円を超える見込みがある

課税事業者になった場合の注意点

課税事業者になると、単にインボイスを発行できるようになるだけではなく、税務・会計上の義務や実務が大きく変化します。個人事業主が課税事業者になった際に押さえておくべき注意点は以下のとおりです。

 

■消費税の納税義務が発生する

 

売上に含まれる消費税を国に納める必要があります。インボイス登録をし課税事業者になった場合、登録された日の売上分から消費税の納税義務が発生。経費に含まれる消費税を差し引いても、利益が少ないと納税で資金が苦しくなることもあるので注意してください。

 

■帳簿と請求書の保存義務

 

消費税の控除を受けるには、インボイス(適格請求書)や帳簿の正確な管理が求められます。レシートや仕入書も「インボイス対応かどうか」を確認しなければなりません。

 

■会計処理が複雑になる

 

税込・税抜の管理や、消費税の申告が必要に。会計ソフトや税理士のサポートがほぼ必須レベルになるケースもあります。

 

■一度課税事業者になるとすぐに戻れない

 

課税事業者になると、すぐに免税事業者へは戻れません。少なくとも2年間は課税事業者としての義務が続くため、将来的な売上見込みや取引先の状況を踏まえて慎重に判断する必要があります。

実際の個人事業主の声

ここからは、個人事業主の方で、実際にインボイスに対応した方・していない方の声を見てみましょう。

対応している人

●デザイン業/年商800万円(免税事業者)

「免税のままだと今のクライアントから『取引できないかも』と言われ、泣く泣く登録。納税は増えるけど、仕事を失う方が怖いです。」

 

●動画制作/フリーランス

「中小企業との取引が中心。インボイス非対応でも最初は何も言われませんでしたが、今年に入ってから『対応してほしい』と言われるように。先手を打って登録しました。」

対応していない人

●美容サロン経営/年商700万円

「お客さんは全員一般の方。インボイスなんて誰も気にしていないし、むしろ消費税を納めたら利益が減るので、登録していません。」

 

●ハンドメイド作家/EC中心

「個人のお客様が多く、売上もそれほど多くないので対応していません。税務署からのお知らせは来たけど、特に困っていません。」

 

●イラストレーター/年商600万円

「クライアントから『非課税でもOKです』と言われているので今のところ未登録。ただ、今後取引先が変わると必要になるかもという不安はあります。」

適格請求書発行事業者になるには

免税事業者が適格請求書発行事業者になるには、以下の手続きを取ります。

 

・「所轄税務署に適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する

審査を経て登録されると、「登録番号」が発行される

登録完了後、インボイス(適格請求書)の発行が可能に

まとめ

インボイス制度は、消費税の仕入税額控除に必要な「適格請求書」を発行する仕組み。発行には課税事業者としての登録が必要です。

 

BtoB取引が多い個人事業主は登録を検討すべきですが、BtoC中心なら影響は少なめ。

 

登録後は納税義務や帳簿管理などの負担も増えるため、事業規模や取引先に応じて慎重に判断することが重要です。