「介護休暇」と「介護休業」の違いを解説
2025年11月30日
突然始まる家族の介護。
仕事と介護の両立に不安を感じたとき、まず頼りになるのが会社の制度です。
しかし、「介護休暇」と「介護休業」という似た名前の制度があり、「どっちを使えばいいの?」「給料はどうなるの?」と混乱してしまう方は少なくありません。
名前は似ていますが、この2つは「使う目的」も「期間」も全く異なる制度です。
今回は、両者の決定的な違いと、それぞれの取得条件や日数をわかりやすく解説します。制度を正しく理解して、自分自身が倒れてしまわないよう、賢く使い分けましょう。
「突発的な休み」か「体制を作る期間」か
2つの制度の最大の違いは、「短期の休み」か「長期の休み」かという点。
簡単にいうと、介護休暇は「短期休み」、介護休業は「長期休み」です。
●介護休暇(短期)
急な通院の付き添いなど、「単発の用事」を済ませるための制度
●介護休業(長期)
仕事と介護を両立させるための、「長期的な体制(環境)を作る」ための制度
介護休暇
介護休暇は、いわば「介護のための有給休暇のようなもの(※ただし給与は原則出ない)」とイメージしてください。
法律(育児・介護休業法)により、労働者の権利として認められています。令和3年(2021年)の法改正により、「時間単位」での取得が可能になったのが大きなポイントです。
たとえば、次のような場合に取得できます。
・親が急に熱を出したため、病院に連れて行く
・介護サービスを受けるための契約に立ち会う
・おむつや介護食などの買い出しに行く
・ケアマネジャーと1時間だけ面談をする
取得できる日数
対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで取得可能です。
ここで言う「1年」とは、会社の事業年度(4月~3月など)を指すことが一般的ですが、会社によって規定が異なるため就業規則の確認が必要です。
給与について
法律上は「無給」でも問題ないとされています。そのため、多くの企業では「ノーワーク・ノーペイ」の原則通り、給与は支払われません。
しかし、福利厚生の手厚い企業では有給扱いとしている場合もあります。 無給の場合は、月給から休んだ時間分が差し引かれますが、「欠勤」扱いにはならないため、賞与の査定や人事評価で不利益な扱いを受けることはありません。
介護休業
介護休業は、その名の通り「休業」です。しかし、ここで最も重要な誤解を解いておく必要があります。
介護休業は、「自分で介護をするための休み」ではありません。「仕事を辞めずに続けるための、準備期間」です。
93日間ずっと親の世話を自分でしてしまうと、休業が終わった瞬間に「介護する人がいなくなったので退職せざるを得ない」という状況に陥ります。この期間は、自分がいなくても親が生活できるよう、ヘルパーさんを手配したり、デイサービスや施設を探したりするための期間として使いましょう。
取得できる日数と回数
対象家族1人につき、通算で93日まで取得できます。 この93日は、一度に全部使う必要はありません。最大3回まで分割して取得できます。
【分割取得の例】
1回目(2週間):親が倒れて入院。退院後のケアプランを作成するために取得。
2回目(1ヶ月):在宅介護を始めたが、状態が悪化。老人ホームを探して入所手続きをするために取得。
3回目(残り日数):別の病気を併発した際の対応に使用。
給与について
介護休暇と同様、会社から給料が支払われることは原則ありません。
「数ヶ月も収入が途絶えるのは困る」と不安になるかもしれませんが、そのために次の項目で解説する公的なサポート制度(給付金)が用意されています。
お金の不安を減らす「介護休業給付金」
介護休業中は、多くの会社で給料が出ません。しかし、雇用保険に入っているなどの条件を満たせば、国から「介護休業給付金」が支給されます。
支給額: 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
給料の約3分の2が補償されるため、経済的な不安を抱えすぎることなく、介護の体制づくりに専念できます。
対象となる家族
対象となる家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
介護の状態(要介護状態とは)
制度を利用するには、対象家族が「要介護状態」である必要があります。 法律では「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」と定義されています。
目安としては、介護保険制度の「要介護2」以上が該当します。 ただし、要介護認定を受けていなくても、医師の診断書などで「常時介護が必要」と認められれば取得可能です。「まだ認定が下りていないから休めない」と諦めず、会社に相談しましょう。
取得できない労働者(除外規定)
正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員も条件を満たせば取得できます。 ただし、以下のような場合は労使協定により対象外となることがあります。
・入社6ヶ月未満の従業員
・1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
・(介護休業の場合)休業明けから93日以内に雇用期間が終了することが明らかな場合
手続きと注意点
いざという時に慌てないよう、手続きの流れを知っておきましょう。早めの相談がカギです。
●介護休暇
当日の電話連絡でも認められるケースが多いですが、原則は「書面での申請」が必要な場合もあります。
●介護休業
開始予定日の2週間前までに、会社へ書面等で申し出る必要があります。
法律はあくまで「最低限の基準」です。
会社によっては、法定以上の手厚い制度(例:介護休暇が有給、休業期間が1年まで可能など)を設けている場合があります。
まずは就業規則やイントラネットを確認するか、総務・人事担当者に「介護の相談をしたい」と伝えてみましょう。
まとめ
いつ起こるかわからない家族の介護、突発的な用事や短時間の対応は「介護休暇」、これから介護と仕事を両立する土台作りの時間が「介護休業」です。その違いをしっかり理解しておきましょう。
介護で「休みを取ること」は、決して悪いことではありません。会社や地域の包括支援センター、ケアマネジャーなど、周囲の力を上手く借りながら、無理のない範囲で介護と向き合っていきましょう。
