企業向け:派遣法の3年ルールと人材確保術

2026年06月30日

深刻な人材不足に悩む企業にとって、即戦力となってくれる優秀な派遣社員は非常に貴重な存在です。「このままうちの会社でずっと働いてほしい」と考える人事担当者や現場の責任者の方も多いでしょう。

 

しかし、そこで壁となるのが「派遣法の3年ルール」。

 

せっかく業務に慣れてもらっても、3年で手放さなければならない…企業を悩ませるルールです。

 

今回は、企業側(派遣先)の視点に立ち、派遣法の「3年ルール」の基本的な仕組みから、優秀な派遣社員に3年を超えて自社で活躍してもらうための具体的な方法、そして混同されがちな「5年ルール」との違いについて解説します。

人材派遣

企業が知っておくべき「3年ルール」の基本

派遣法の「3年ルール」とは、2015年の労働者派遣法改正によって定められた派遣期間の制限です。

 

派遣先企業は、原則として「同じ派遣社員を、同じ組織(部署・課など)で3年を超えて受け入れることができない」と定められています。

 

このルールには、企業が管理すべき2つの期間制限が存在します。

事業所単位の期間制限

派遣先企業が、同じ事業所で派遣社員を受け入れられる期間は、原則3年までとされています。ただし、過半数労働組合(または労働者の過半数代表者)からの意見聴取の手続きを適切に行うことで、3年を超えてさらに3年間、派遣社員の受け入れ枠を延長することが可能です。

個人単位の期間制限

同じ派遣社員が、派遣先の「同じ組織単位(人事課、営業第一部など)」で働ける期間は上限が3年です。たとえ事業所単位の期間延長手続きを行っていても、個人の3年ルールをリセットすることはできません。

3年ルールの対象外となる「例外」ケース

すべての派遣社員に3年ルールが適用されるわけではありません。以下の条件に当てはまる人材であれば、例外として3年を超えて同じ部署で受け入れ続けることが可能です。

 

 

 

・派遣会社(派遣元)と「無期雇用契約」を結んでいる派遣社員を受け入れる場合
・60歳以上の派遣社員を受け入れる場合
・終期が明確な有期プロジェクト業務を委託する場合
・日数限定業務(1ヶ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下、かつ10日以下)の場合
・産前産後休業、育児休業、介護休業などを取得する自社社員の代替要員として受け入れる場合

人

優秀な派遣社員に3年を超えて自社で働いてもらう方法

人材不足が深刻な中、自社の業務を熟知した優秀な人材を手放すのは大きな痛手です。3年の期限を迎える派遣社員に、引き続き自社で活躍してもらうための現実的な選択肢は以下の3つです。

1.自社の社員として「直接雇用」する(推奨)

最も確実で、企業にとってもメリットが大きいのが、派遣社員を自社の正社員や契約社員として直接雇用する方法です。すでにスキルや人柄、自社への適性が分かっているため、採用のミスマッチを防ぐことができます。派遣会社との間で職業紹介(紹介予定派遣など)の切り替え手続きを行い、労働者本人の合意が得られれば、貴重な戦力を長期的に確保できます。

2.派遣会社に「無期雇用派遣」への転換を打診する

派遣社員が、現在登録している派遣会社と「無期雇用契約」を結べば、3年ルールの対象外となります。労働者本人が派遣会社との無期雇用を望んでいる場合、派遣会社側に無期雇用派遣(常用型派遣)への切り替えが可能か相談してみるのも一つの手段です。

3.自社内の「別の部署」へ異動させる

個人単位の期間制限は「組織単位(課・グループなど)」に対して適用されます。そのため、「営業課」で3年を迎えるスタッフを「総務課」へ異動させるなど、別の組織単位に配置転換すれば、そこからさらに最大3年間受け入れることが可能です。ただし、業務内容が大きく変わるため、本人のキャリア意向や適性を慎重にすり合わせる必要があります。

※注意:クーリング期間について

派遣の受け入れを3ヶ月と1日以上空ける(クーリング期間)ことで期間制限はリセットされますが、人材不足の企業にとって「3ヶ月間ポストを空ける」ことや「その間に優秀な人材が他社へ行ってしまうリスク」を考慮すると、現実的な対策とは言えません。

「3年ルール」と「5年ルール」の違い

企業の人事担当者がよく混同してしまうのが、派遣法の「3年ルール」と労働契約法の「5年ルール(無期転換ルール)」です。企業側(派遣先)の視点で、この2つの違いを明確にしておきましょう。

3年ルールと5年ルール

つまり、5年ルールに基づく「無期雇用化」の責任を負うのは、あくまで雇用主である派遣会社です。派遣先企業である皆様が、5年を超えた派遣社員を自動的に直接雇用しなければならないわけではありません。ただし、派遣会社と無期雇用契約を結んだ派遣社員は前述の通り「3年ルールの例外」となるため、結果として同じ職場で長く受け入れられるようになります。

まとめ

派遣法の3年ルールは、企業にとって「人材を失う期限」ではなく、「優秀な人材を直接雇用へ引き上げるための見極め期間」と捉える見方もできます。

 

人材獲得競争が激化する昨今、外部から全くの未経験者を採用して育成するよりも、すでに自社で3年間活躍してくれた派遣社員を直接雇用する方が、はるかに効率的かつ確実な人材確保策となります。優秀な派遣社員が3年の期限を迎える前に、自社で長く働いてもらうためのプランを戦略的に準備しておきましょう。