時間外労働の割増賃金率をわかりやすく解説
2025年05月15日
時間外労働の割増賃金率は、日本の労働基準法に基づき、労働者の権利を保護するために定められています。
労働者が法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えて働いた場合や、休日・深夜に労働した場合、事業主は通常の賃金よりも高い率で割増賃金を支払わなければなりません。
今回は時間外労働の割増賃金率について解説します。
時間外労働の割増賃金率の概要
日本の労働基準法では、1日8時間、週40時間を超える労働を「時間外労働」と定義し、以下の割増賃金率が適用されます。
1. 時間外労働(法定労働時間を超える労働)
通常の時間外労働:25%以上の割増賃金
月60時間を超える時間外労働:50%以上の割増賃金
2. 休日労働(法定休日に働いた場合)
法定休日の労働:35%以上の割増賃金
3. 深夜労働(午後10時から午前5時まで)
深夜労働:25%以上の割増賃金
※時間外労働が深夜に及ぶ場合、割増率は加算され、合計で50%以上となります。
時間外労働・休日労働・深夜労働の割増率一覧表

割増賃金の計算方法
割増賃金は、労働者の「1時間あたりの賃金」に割増率を乗じて算出されます。
1時間あたりの賃金は、月給や日給などの給与形態に応じて計算され、通常、月給を所定労働時間で割ることで求められます。
例
月給:30万円
所定労働時間:160時間
1時間あたりの賃金:30万円÷160時間=1,875円
例:月に70時間の時間外労働をした場合の割増賃金を計算
上記の条件で「月に70時間の時間外労働をした場合の割増賃金」を計算します。
時間外労働:70時間
(うち60時間を超えた分:10時間)
60時間分(25%増し):1,875円×1.25×60時間=140,625円
10時間分(50%増し):1,875円×1.5×10時間=28,125円
合計の割増賃金:140,625円+28,125円=168,750円
※深夜労働や休日労働が含まれる場合はさらに加算されます(別途計算が必要)
企業の対応と注意点
企業は、労働者に時間外労働を命じる場合、労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
また割増賃金の支払いを怠ると、労働基準法違反となり、罰則が科される可能性もあるため注意が必要です。
労使協定(36協定)とは
労働基準法第36条に基づき、使用者と労働者代表が結ぶ「時間外・休日労働」に関する協定のことです。正式には「時間外・休日労働に関する協定届」と呼ばれ、労働基準監督署への届け出が必要です。
日本の労働基準法では、原則として1日8時間、週40時間を超える労働(=時間外労働)や、法定休日の労働(=休日労働)は禁止されていますが、36協定を結び届け出ることで、その枠を超えた労働が可能になります。
まとめ
時間外労働の割増賃金率は、労働者の健康と生活を守るための重要な制度です。
企業は法令を遵守し、適切な労働時間管理と賃金支払いを行うことが求められます。
労働者も、自身の労働条件を理解し、必要に応じて労働基準監督署などに相談することが大切です。