接待交際費の上限は?期限や注意点を解説

2026年09月15日

取引先と良好な関係を築くために必要な会食や接待。「接待交際費」はビジネスにおいてきわめて重要な経費です。

 

2024年(令和6年)4月1日より、交際費等の枠から除外して全額を経費(損金)に算入できる飲食費の上限が、長らく続いた「1人あたり5,000円」から「1人あたり10,000円」へと倍増しました。

 

これにより、より質の高いお店選びが可能となり、ビジネスチャンスの拡大に繋がっている企業も多いことでしょう。

 

しかし、この嬉しい見直しは永遠に続く法律ではなく、「2027年3月31日までに開始する事業年度」までの期間限定の特例であることをご存知でしょうか。現在、2026年も後半に入り、この適用期限が徐々に近づいてきています。

 

今回は、接待交際費の「1万円ルール」を正しく適用するための必須要件から、実務担当者が陥りやすい落とし穴、そして「2027年4月以降、特例はどうなるのか?」という今後の見通しまでを解説します。

交際費

交際費の「1万円ルール」とは?拡充の背景

法人税法上、企業が支出する「交際費等」は原則として経費(損金)にすることができません。

 

しかし、経済活動を円滑にするための例外として、「一定の要件を満たす飲食費は交際費から除外し、全額を損金として扱ってよい」という特例が設けられています。

 

この上限額が、2024年の税制改正によって、飲食費の除外上限が「1人あたり 5,000円以下」から「1人あたり 10,000円以下」に引き上げられました。

 

この改正の背景には、近年のインフレによる外食費用の高騰があります。5,000円では十分な接待ができなくなりつつある実態に即して見直しが行われました。同時に、企業が交際費を積極的に使いやすくすることで、飲食業界の売上増加や、ひいては飲食業界で働く人々の「賃上げ」を促すという、マクロな経済波及効果も狙いとして込められています。

特例を適用するための「4つの必須要件」

1人あたり1万円以下であれば何でも経費になるわけではありません。税務調査で否認されないためには、以下の4つの要件をすべてクリアする必要があります。

社外の利害関係者が参加していること

得意先や仕入先など、社外の事業関係者が1名以上同席していることが大前提です。自社の役員や従業員のみで行う忘年会などの「社内交際費」は、1万円以下であっても特例の対象外です。

「飲食」を目的とした費用であること

レストランでの食事代や居酒屋での飲み代、出前代などが対象です。ゴルフのプレー代や旅行費用、持ち帰り用の手土産(贈答品)などは、1万円以下でも交際費として扱われます。

1人あたりの金額が10,000円以下であること

「飲食費の総額 ÷ 参加した全員の人数」で計算します。この「全員の人数」には自社側の参加者も含めて計算して構いません。

必要事項を記録した書類を保存していること

領収書や精算書に「飲食の日付」「相手先の氏名や名称」「参加人数の合計」「店名と所在地」「支払金額」の5項目を明記し、適切に保管する義務があります。

接待

経理担当者が陥りやすい「3つの罠」

実務において、この1万円ルールを運用する際には、経理上の細かな落とし穴に注意が必要です。

1円でも超えたら「全額」が交際費になる

計算の結果、1人あたりの金額が「10,001円」になってしまった場合、はみ出した1円だけが交際費になるのではありません。「10,001円の全額」がこの特例の対象外となり、全額が交際費としてカウントされてしまいます。

税抜・税込の判定は「自社の経理方式」に依存する

自社が「税抜経理」を採用しているか「税込経理」を採用しているかで、1万円のボーダーラインが変わります。税抜経理であれば本体価格10,000円(消費税10%なら税込11,000円)までOKですが、税込経理の場合は税込10,000円に収める必要があります。

複数店舗のハシゴは原則「合算」される

1次会と2次会を同じメンバーで行った場合、原則として「1回の接待」とみなされ、合計金額で1万円以下かを判定するのが安全です。ただし、店舗が明確に分かれており会計も別であれば、店舗ごとに判定することが認められるケースもあります。

企業規模別:交際費ルールとビジネスへの好影響

交際費のルールは、企業の規模(資本金)によって使える制度が異なります。

 

中小企業(資本金1億円以下)の場合

「年間800万円までの交際費を全額損金にできる特例」があります。日々の接待飲食費をしっかり1万円ルールで除外処理しておくことで、この800万円の枠を温存し、お中元や手土産、1万円を超える高額な接待に枠を回すことができるため、非常に大きな節税効果を生みます。

 

大企業(資本金1億円超)の場合

 

800万円の枠はなく、「接待飲食費の50%相当額」を損金にできるルールとなっています。大企業においても1万円ルールを活用することで、経費化できる金額を最大化できます。

ビジネスへの波及効果

予算が1万円に増えたことで、個室のある落ち着いたレストランや、質の高いコース料理を選びやすくなりました。これにより、取引先との深い信頼関係の構築など、ビジネスチャンスの拡大に繋げることができます。

期限問題:2027年3月31日以降、特例はどうなる?

前述の通り、1万円ルールや中小企業の800万円枠を含む交際費の特例は、すべて「租税特別措置法」という時限措置(期間限定の法律)に基づいています。現在の適用期限は「2027年3月31日までに開始する事業年度」までと定められています。

法律上の原則

もし何の法改正も行われず期限を迎えた場合、日本の税法の厳しい大原則に戻り、「交際費は1円たりとも会社の経費として認めない(全額損金不算入)」という非常に厳しい状態に陥ります。

実務上の見通し(延長の可能性)

実際に交際費がすべて経費外となれば、企業活動や飲食業界に大打撃を与えてしまいます。そのため国は過去数十年間にわたり、2~3年ごとにこの特例の「期限延長」を繰り返し行ってきました。

 

したがって、2027年以降についても「再延長される可能性が極めて高い」というのが実態です。

 

現在2026年後半を迎えており、まもなく年末にかけて翌年度の「税制改正大綱」の議論が本格化します。この2026年末に発表される大綱において、「交際費の特例がさらに延長されるか」が明記されるはずですので、経営者や経理担当者は年末のニュースを注視しておくと良いでしょう。

まとめ

接待交際費の「1万円ルール」は、インフレに対応しつつ企業の営業活動を後押しする強力な制度です。「1円でも超えると全額対象外になる」といった厳格なルールを守り、適切な記録を残すことで、節税とコンプライアンスの両立が可能になります。

 

2027年の期限問題については過剰に心配する必要はありませんが、まずは現行の制度を正しくフル活用し、ビジネスの成長に役立てていきましょう。