電子帳簿保存法を導入しない場合の影響とは

2025年03月30日

電子帳簿保存法は2024年1月から電子取引データの電子保存が原則として義務化されています。

 

しかし実際には、対応の遅れやコスト面の問題、意識の低さなどにより、すべての企業が対応できているわけではありません。

 

もし対応せず紙で管理し続けた場合、青色申告の取り消し、重加算税の適用、さらには最大100万円の過料など、経営に大きなダメージを与えるリスクがあります。

 

今回は、電子帳簿保存法を導入しない場合の具体的な影響やデメリットを解説します。

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、企業の帳簿や書類を電子データとして保存することを認める法律。1998年に制定され、以降の改正により電子取引のデータ保存が段階的に義務化されてきました。

 

2024年1月以降は、電子取引のデータを電子的に保存することが原則義務化され、企業には適切な対応が求められています。

 

この法律の目的は、税務手続きの効率化と透明性の向上です。

 

従来の紙媒体による保存では、保管スペースや管理コストがかかるだけでなく、税務調査時の確認作業が煩雑になるという課題がありました。電子保存を義務化することで、企業の業務効率化を図るとともに、税務調査の迅速化や適正な課税を実現する狙いがあります。

3つの保存区分

電子帳簿保存法には、以下の3つの主要な制度があります。

 

電子帳簿等保存

会計帳簿や決算書などを電子データで保存できる制度

 

スキャナ保存

紙の領収書や請求書をスキャナで読み取り、電子データとして保存できる制度

 

電子取引データの保存

電子的に授受した請求書や領収書などを電子データのまま保存することが義務付けられる制度

 

 

特に電子取引データの保存義務に違反した場合、企業に対して厳しい罰則が科される可能性があります。

電子帳簿保存法を導入しない場合の罰則

電子帳簿保存法を導入しないと、さまざまなリスクが生じます。

青色申告の承認取り消しリスク

電子取引のデータ保存義務に違反した場合、税務署の判断によって青色申告の承認が取り消される可能性があります。

 

青色申告特別控除(最大65万円)が適用されなくなり、税負担が大幅に増加するため、経営に大きな影響を与えるでしょう。

 

特に中小企業にとっては、この控除が適用されなくなることで利益率が低下し、資金繰りが厳しくなる恐れがあります。

重加算税のリスク

電子データを適切に保存していない場合、税務調査で「隠蔽・仮装」と判断される可能性があります。

 

これにより、通常の過少申告加算税(10%~15%)よりも重い重加算税(35%~40%)が課されることに。

 

また、過去の帳簿の保存状況に問題があると、数年分の追徴課税が発生することもあり、企業の財務に大きな負担をもたらすでしょう。

会社法による過料

会社法では、適切な会計帳簿の備え付けや保存が義務付けられています。電子帳簿保存法の義務に違反し、適切に帳簿を管理しなかった場合、会社法に基づく過料の対象となる可能性があります。

 

この違反に対する過料は最大100万円。

 

またこれにより企業の信用が低下し、金融機関からの融資に影響が出る可能性もあります。

取引先との信用問題

電子帳簿保存法に対応していない企業は、取引先から「コンプライアンス意識が低い」と判断され、ビジネスの継続に支障をきたす可能性があります。

 

特に、大企業や上場企業との取引では、法令遵守が取引の条件となることが多く、対応していない企業は取引から排除されるリスクも。

 

また、電子保存を導入している企業同士では、データのやり取りが迅速かつ効率的に行えるため、非対応の企業が競争力を失う要因にもなります。

注意

電子帳簿保存法を導入しない場合のデメリット

上記のリスクのほか、電子帳簿保存法を導入しないデメリットも生じます。

税務調査時の対応負担増加

電子取引データを紙で保存する場合、税務調査時に膨大な書類の提出が求められることがあります。

 

電子保存を導入していれば、検索や提出が迅速に行えますが、紙ベースの管理では必要な書類を探すだけで時間がかかり、調査への対応が長期化する可能性があります。また、税務署からデータの改ざんや不備を疑われるリスクも高まるでしょう。

コストの増加

紙の帳簿や請求書を保管するには、印刷代、ファイル代、キャビネットや倉庫のスペース確保など、多くのコストがかかります。

 

特に長期間の保存が義務付けられる帳簿類では、管理コストが積み重なり、企業の財務負担は増加。書類を探す時間や管理作業にかかる人件費も無視できません。

効率の低下

電子帳簿保存を導入していないと、帳票の検索や共有に時間がかかり、社内の業務効率が低下します。

 

特に、多拠点展開している企業では、必要な書類を本社に依頼したり、郵送で取り寄せる必要があり、対応が遅れることで業務全体の遅延につながる可能性も。

 

またテレワークなどの柔軟な働き方にも対応しにくくなります。

データ紛失や管理リスク

紙の書類は火災・水害・盗難などのリスクにさらされるほか、保管スペースが膨大になると管理が煩雑になり、紛失の可能性も高まります。

 

一方、電子保存を導入すれば、クラウド上でのバックアップやアクセス制御が可能になり、データ管理の信頼性が向上するでしょう。

まとめ

電子帳簿保存法を導入しない場合、税務対応の負担増やコスト増加、業務効率の低下といったデメリットが生じるだけでなく、青色申告の取り消しや重加算税のリスク、さらに会社法による過料の可能性もあります。

 

企業の財務や信用に悪影響を及ぼすだけでなく、将来的な競争力の低下にもつながるため、早めの対応が求められますが、リソース不足やコストの問題から未対応の企業もあるようです。

 

しかし対応は必要不可欠。企業の持続的な成長に、電子帳簿保存は欠かせません。

 

電子取引のデータ保存を適切に行い、法令遵守と業務効率化を両立させましょう。